ねりものといえばはんぺん

はんぺんあいしてる

何もしないから

「なんかすごく眠い、運転代われる?」
「ごめん、あたしオートマ限定」
「マジか」
「つーかマニュアルなんか必要ないじゃん」
マニュアル車に乗ってるんですけど、しかも今」
「なんでそんな車買ったのよ」
「オートマ嫌いだから」
「それと同じ理由であたしはマニュアル嫌いなの」
「じゃあしょうがないな~」
「よくそんな車運転できるね」
「慣れたらなんてことない」
「そもそも慣れようと思わないよ」
「なにそれ新発想すぎる」
「ねえ、どうしてマニュアルにしたの?」
「昔、バイクに乗ってたから」
「意味わかんないよ」
バイクって基本的にマニュアルなんだよ」
「で?」
「マニュアルが俺の中では自然なんだよ」
「訳わかんない」
「オートマだとやることなくて眠くなるんだ」
「マニュアル運転してる今も眠くなってるじゃん」
「はっ、そういえば」
「ちょっとコンビニ寄ってコーヒー飲もうよ」
「コンビニもいいけどさ」
「なあに?」
「せっかくだからあそこに入ろうよ」
「えっ、ホテル?」
「大丈夫、何もしないから」
「本当?」
「うん」
「信じられないよ」
「なんでだよ~」
「何もしないなんて無理でしょ」
「それはどういう意味?」
「だって息してるし」
「うそだろ、息するのもダメなのかよ」
「何もしないって言ったじゃん」
「分かったよ、じゃあ息するの我慢する」
「なにそれ~、バカじゃないの?」
「そうだよ、バカだよ」
「ほんとにバカだね~」
「可哀想になったでしょ?」
「そうだね」
「じゃあ、いいよね?」
「もう、しょうがないなあ」
「やったー」
「でも、息以外何もしたらダメだよ?」
「せめてまばたきだけは許してほしい」
「分かった、でも息とまばたきだけだからね」

「こういうところ来るの久しぶりすぎて新鮮」
「何もしない約束だよ?」
「まさか、おしゃべりも含んでんの?」
「当たり前でしょ」
「そんなの聞いてないっすよ」
「好きなだけ息とまばたきしていいからね!」
「・・・」
「わ~、見て見てアメニティたくさんあるよ!」
「・・・」
「ねえ、ちょっと聞いてんの?」
「・・・」
「分かった、おしゃべりは許可するよ」
「ありがたき幸せでござる」
「眠いなら少し寝たら?」
「え?寝てもいいんすか?」
「いいよ」
「それではお言葉に甘えて」
「え、ちょっと、なに」
「寝てもいいんでしょ?」
「え?え?なに?」
「だから、君と寝ていいって許可が出ました」
「そんなつもりで言ったんじゃない・・・」
「もう止められないよ」
「ん、ちょっと、いきなりすぎ、る、よぉ」
「唇やわらかいね」
「あん、だめ」
「大丈夫、まだなにもしてない」
「してるじゃん!」
「気のせいだよ」
「も~、強引すぎるよぉ・・・」
「下着汚しちゃうとアレだから脱がしちゃうね」
「待って、シャワー浴びたい」
「じゃ、一緒に入ろ?」
「それは絶対ダメ!」
「なんでだよ」
「ダメなものはダメなの!」
「姫様のお背中お流ししますよ?」
「そんなことしなくてもシャワーあるから!」
「わかった、息とまばたきして待ってる」
「じゃ、ちょっと行ってくるね」

プルルルルル、プルルルルル、ピッ

「はぁい」
「あ、もしかして寝てた?」
「んー、寝てたみたいですぅ」
「ごめんねー、起こしちゃった」
「どうしたんすかぁ?」
「今日のイベントのことだけど」
「イベント?」
「そう、今日だよ」
「それはいいんですけど~、今何時ですか?」
「6時半」
「早くないすか?」
「早いね~」
「今、夢見てて超いいところだったんですけど?」
「あ~、ごめんごめん」
「あとちょっとでエッチできるとこだったのに」
「また寝て続き見たらいいよ~」
「無茶苦茶なこと言わないでください」
「ところで、9時からみんなで設営するから」
「はぁい」
「できたら早めに来てくれる?」
「分かりました」
「じゃ、よろしく~」

プッ、ツーツーツー